2015年1月25日日曜日

マット先生講義「初期のGoogleで学んだこと」

昨年末のマット先生講演とスライドが公開されました。
長期休暇中のマット先生が久々にGoogleのお話を!
とてもいい講義なのでお勧めです。
以下は概要。これを見て興味を持っていただければ幸い。


■枕① 3万ドルをおじゃんにして唸るマット先生
「昔はCD焼くのとか"満月の夜に鶏の生き血を捧げて儀式を行う"みたいな感じだったじゃない。

Linuは特にひどかった。鶏の生き血が倍は必要な感じ。
なんでLinuxでのCDの焼き方を書いたことがあったんだ。

そのご縁で「VA Linux株(当時はIPO前)100株を無償提供するよ!添付のpdfに記載してね!」
ってメールをもらったんだ。でもpdfいじる方法なかったから放置プレイしてたの。

IPOしたら一株320ドル!
・・・返信忘れてた・・・
ちなみに当時の年収4万ドル。そりゃこうなるよ!」
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いい唸り声を上げてます。そりゃねぇ・・・
CDの焼き方の話がすごい懐かしい。CloneCD×太陽誘電!これね!


■枕② マット先生とエロス
その後Googleに入社して、静かにコード打ちにいそしむマット先生。

ある日、マネージャー(女性)がマット先生に近づいてきて…
(灬╹ω╹灬) ねえマット、あなたえっちな画像とかどう思う♥
(´・ω・`) !?・・・どゆこと?
マット先生に貞操やらキャリアやらの危機が!

…ということではなくセーフサーチの開発お願い♥されたマット先生。
その後数ヶ月でマット先生が研究したこと
①19言語でセッ○スを認識する方法
②○○(えっちすぎて言えない)の書き方480通り
…マット大先生に詳しく教わりたいです。

でも数ヶ月もすると、一人でやることの壁にぶち当たるマット先生。
同僚にご助力願ったら、自分では想像もしなかったポルノがどんどんでてくる。
そりゃまあ十人十色の性的嗜好があるものねえ…

なのでメーリスで「皆さんちょっとポルノ系のワード打ったりポルノ探すの手伝ってくれない?」
と助力を募ったけど全スルー。先生自身言ってるけどそりゃ罠だと思うよね・・・
そこで先生の奥さんが考えた解決策が素敵。
①奥さんがクッキー焼く
②ポルノ探しを手伝ってくれた人にクッキーあげる
これが大当たりして、後にはスパムクッキーとかも出来たそうな。こんなの。
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こうした個人的な「創造的な手法での問題解決」から、次のGoogle全体・ビジネス全体での「創造的な手法」に演繹していくあたり、やっぱり先生は話がうまい。



■レッスン① 難問に直面したら、創造的な解決法を模索しよう
Googleが初期に直面した大問題の話をしよう。
「more evil than satan himself(サタンよりも邪悪なもの)」でここが1位になってたこと
…ではなく、DMCAによる削除申請問題。

某宗教団体が批判的な批評家を抑圧するためにDMCA申請をしたことがあり、批評家は米国での訴訟に巻き込まれたくないので異議申し立てをしなかったというケースがあった。
私はFred Brooksの言葉を参考に、「二律背反する状況下では、良い経営者は明確な対立点を満足させるような創造的な解決策を編み出すことが多い」と提案した。
その結果単に削除するのではなく、「削除申請に基づいて削除した」点を検索結果上に記載し、chillingeffects.orgに申し立て内容を掲載するようにした。
ユーザーに「どういう状況があって表示されなくなっているのか」という情報を提供したわけだ。

「難問に直面したら、創造的な解決法を模索しよう。」
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「某団体の言い分どおりに削除する」「批評家に異議申し立てをするように働きかける」といった現状の枠組み内での解決策にとらわれず、根本である「害を成さない」「必要とあれる情報を届ける」といった点に立ち戻って判断してるあたりが流石です。
ちなみに昨年度のDMCAによる削除申請件数は3億5000万件だそうな。ご苦労様です。


■レッスン② やりたいことがあるなら、主張しよう
セーフサーチ担当後、広告部門に移ったマット先生。
広告の仕事をしつつも、スパムの加熱が気になってしょうがなかった。
ある日、意を決してエンジニア担当副社長に「スパム対策の仕事がしたいんです」と申請。
「いいよ!いつからやる?」とあっさり許可されてびっくり。

「周囲の人々は、君の行動・仕事以上のものを見ていない。自分がやりたいことがあるなら、自分から要求しないといけない。」
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「俺の秘められた力を何でわかってくれないんだ!」とか言ってても始まりませんしね。


時間切れなので後半は要点+エピソードを抜粋で
■要点
・自分の仮説・仮定を疑おう。
「データが多くなると、計算が難しくなる。」本当か?
音声認識・画像認識などは大量のデータを活用するという逆の発想で進化している。

・トレードオフを考えよう。以下のどちらがインデックスの置き場として適切?
「安いがスループットが低いHDD」「高いがスループットの高いRAM」

・企業・キャリアを成功に導くのは、多数の細かい成功の集合。一つの派手な成功ではない。
・いいことばかりが起きる訳ではない。Googleも多くの訴訟や聴聞を受けてきた。
悪いことがおきることもある。心構えをしておこう。
・写真を撮ろう。変わった事が起きたとき、年中行事、楽しいことを思い出に残そう。

Fred Brooksの言葉より。
「ツールメーカーの成功とは、ツールを使ったユーザーが成功することだ」

■エピソード
・入社前にPageRankについて、レア文献・特許も含めてガッチリ勉強したマット先生。

文献・特許よりも遥かに洗練された真のPageRankにびっくり

・ペナルティを与えたスパマーからクッキーの贈り物が。

一見普通のクッキーだけど、大きさがピザ並み。愛が重い。
ちなみに、「毒入りなんじゃないの」とかワイワイ言った後食ったそうです。

・Googleでは週に一度、ラリーとセルゲイへの質問タイムがあるそうな。
入社者の紹介や先週の振り返りの後ってことなので、朝礼みたいなイメージでしょうか。
マット先生いわく「億万長者を"なんでこんなことしちゃったの?"とか"他の方法のが良かったんじゃないの?"とか質問攻めにするのって楽しいよ!」
・・・いや普通の人は胃に穴が開きそうなんですが先生

・エープリルフールの一幕。
エンジニア担当副社長はサンタバーバラ(有名なリゾート地)出身

「彼のお部屋をサンタバーバラにしよう!」

砂90kg購入

執務室が素敵なビーチに(ぺんぺん付き)


隣室の人
「海沿いになってうちの部屋の地価上がった!」

最後にマット先生からの素敵な言葉を。
ポルノ探すのが仕事とか最高だぜ!
以上、切れ味健在のマット先生でした。
英語わかる人はオリジナル見ることをお勧めします。楽しいから。



















…実は続きがありまして。
スライドにはAppendixが付いてて、その内容がいい。

①成功と幸福の秘密(スライド70~72)
「人々が求めるもの」かつ「有用なもの」を提供する。
片方ではダメ。

②自分の責任範囲(スライド73~75)
全ては、自分の責任範囲に含まれると考える。
・ユーザーがつづりを間違える?それはこちらで対処すべき問題だ。
・ユーザーが検索の仕方がわからない?それはこちらで対処すべき問題だ。
・十分なコンテンツがない?それはこちらで対処すべき問題だ。
・ユーザーはその言語が使えない?それはこちらで対処すべき問題だ。
・インターネットが遅い?それはこちらで対処すべき問題だ。

本来責任を負うべきでない範囲もおのれの責任範囲と考え、①に該当する仕事を増やしていこうという攻めの姿勢。

上から順に
・オートコレクト
・ハミングバード、コンテキスト理解
・ナレッジグラフ
・Google翻訳
・サイトスピードのランキング要素化
で実行に移してるのが素敵です。